体験的脳梗塞対処法
脳梗塞とコイル塞栓術
平成12年の冬口、46歳の時でした。右頭頂部がズキンズキンと痛いので病院に行くと、風邪薬を処方されまた。それを飲むと痛みが治まりました。年が明けて1月。スーパー銭湯へ行った帰り、気分が悪かったので友人のクリニックに立ち寄りました。血圧を計っていましたら、あっと言う間に200近くに跳ね上がりました。「舌を上げて!」降圧スプレーを素早く振りかけられました。「すぐ救急車を呼んで!」幸いな事に、通りの丁度反対側に脳神経外科がありました。救急車で運び込まれて、昼間食べたUFOを一晩中吐いていました。吐いた後、水を飲みたいのですがゴクンと飲めません。「嚥下障害」というものでした。「椎骨動脈乖離」。首から脳に血液を送っている動脈は左右2対あります。首の前側にあるのが頸動脈。首の骨の中にあるのが椎骨動脈です。頭部では椎骨動脈乖離が一番多いらしいです。動脈の壁は三層構造になっています。その一番内側が裂けて血液が入り込み、動脈瘤ができて脳血流障害を起こしていたのでした。血の塊を流す為の点滴が始まりました。1週間経過。動脈瘤の状態を調べるため血管造影をするといいます。これは足の付け根・鼠蹊部からカテーテルを挿入して頭部椎骨動脈まで進め、造影剤を注入しながらX線検査をするというものでした。入院直後もしたのでしょうが、よく覚えていません。造影剤を注入されると、頭の中に熱湯を注ぎ込まれた様な感じがしました。検査の結果、動脈瘤は縮小するどころか破裂寸前でした。緊急手術と言う事になりました。後で調べたのですが、脳動脈瘤の手術は、頭蓋骨を開頭して動脈瘤ができている箇所の前後の血管をクリップで留めて破裂を防ぐという、「クリッピング」が主流でした。1947年北アイルランド生まれの脳神経外科医ショーン・ムーランは、機械式時計の部品であるヒゲゼンマイを動脈瘤内に送ってコイル状にぎっしり詰め込み、血液を凝固させて破裂を防ぐ事に成功しました。ここから、脳動脈瘤にコイルを詰める治療法が大きく飛躍します。1980年代、別の医師によりカテーテルを通してプラチナコイルを動脈瘤に充填し電気で切り離す画期的な治療法が開発されました。これが「コイル塞栓術」です。私が担ぎ込まれた時、偶々この「コイル塞栓術」を勉強したての、若い先生が大学から派遣されていました。この先生が居られなかったら、開頭され、手術も上手くいっていたかどうか判りません。開頭による肉体的・精神的負担も計り知れません。もし銭湯の帰りにクリニックに寄らなければ・・・そのクリニックの前に脳神経外科がなければ・・・そこに「コイル塞栓術」のできる先生が居られなかったら・・・。どなた様かの為になるように生かされているのかもしれない。何と有難いことだろうと思いました。行政書士を天職と思い、生涯一書生として人様のお役に立てますよう精進して行きたいと考えております。
(追伸)
手術から14年経ちますが、今は、術後1年おきに受けていたMRI検査も受けておらず、薬も飲んでいません。開頭による肉体的・精神的負担を考えますと、普段から「コイル塞栓術」の実績のある所を探しておかれるのが宜しいかと思います。予防法として一番大切な点は「決して無理をし過ぎない」という事です。