モルヒネの使い方
「モルヒネ」は口から飲む分には安全な方法です。「モルヒネ」使用量が日本はカナダ・オーストラリアの約7分の1、アメリカ・フランスの約4分の1程度と先進国中最低レベルです。言い方を変えれば、我が国のがん患者さんはそれだけ激しい痛みに耐えているのです。「モルヒネ」などを適切に使って痛みの無い患者さんの方が長生きする傾向にあります。食事も摂れ睡眠も確保できるので心身の負担が減り、それが長生きに繋がるのかもしれません。豊かな人生は豊かな瞬間の積重ねです。その為にはがんの痛みに耐えている時間など無いのです。「モルヒネ」を使うと意識がぼんやりするという通説は間違いです。死ぬ前に昏睡状態を続けているのは、鎮静剤とか強い睡眠剤を与えて苦しくない様にさせているからです。痛みを取るには「モルヒネ」が一番効くのです。少量の「モルヒネ」を一日2回とか3回に区切って定期的に与えると眠くならずに意識ははっきりとしています。しかも死ぬまで痛みがありません。又むかつきもだんだん鎮まります。痛みが始まらない内に与えるのです。最後に家族の人に「お世話になったね」と言ってお別れができます。今の病院で尊厳死がないというのは、日本では「モルヒネ」の使い方に通暁していないからです。注射の打ち方が遅いから大量に注射しないと痛みが取れないという悪循環に陥りますが、そうではなくて、痛くなる前に少し薬を飲めばそれで効くと言う様な『予防的なモルヒネの使い方』をすれば良いのです。その事によって中毒にはならないし意識もはっきりと保たれるのです。(日野原重明先生)