クンバハカ
身体論・クンバハカとは
ストレスこそ疲労の最大原因だと思っていました。私は人一倍ストレス・プレッシャーに弱い人間でした。それ迄、ストレスに対する耐性は、性格・経験・考え方次第だと思っていました。ところが、或る軀の持ち方をする事によって耐性がつく、いやストレスそのものを和らげ感じにくくする体勢があるというのです。身体論を渉猟して最後に中村天風師に辿り着きました。中村天風師とは日本最初のヨガ行者・哲学者・思想家です。天風師に師事した人は、東郷平八郎、原敬、山本五十六、双葉山、松下幸之助、宇野千代、稲盛和夫、広岡達郎、ロックフェラー三世などそうそうたる人たちがいます。戦後は、サラリーマンや商店主、主婦や学生など一般の人たちに講演を通じて天風理論を広め、95歳で亡くなった後も、天風理論は伝えられ、これ迄にこの理論を学んだ人の数は100万人に達すると言われています。東郷平八郎は中村天風師を哲人と名付け、後述するクンバハカ法を聴いた時、「日本海海戦の時、もしもこの方法を知っておいたならば、敵の旗艦が沈没する一部始終をゆっくり見られたでしょうがなあ。」と驚嘆したそうです。ロックフェラー三世には「一生生活は保証しますので、アメリカに来て私の側にいて下さい。」と懇願されました。中村天風師はこう言っています。『感覚なり感情なりの衝動、ショックを受けたら、急いで軀の三カ所を特別な持ち方をするんです。軀の三カ所とはどこだというと、肛門とおなかと肩です。腹が立つ事、心配な事、恐ろしい事、何かにつけて感情、感覚の刺激衝動を心に感じたら、すぐ肛門を締めちまう。そしておなかに力を込めると同時に肩を落しちまうんだ。この三カ所がそうした状態にされた時に初めて感情や感覚の刺激衝動が、心には感じても神経系統に影響を与えないという、いわゆる影響を減じる効果がある。別々にやっちゃいけないよ。お尻を締めて、おなかに力を入れて、肩を・・・なんてゆっくりやってはだめだよ。普段の習慣として一番大切なのは、肛門をしょっちゅう締める事。歩くんでも、ものを考えるんでも、かように長く立ってしゃべっている時でも、肛門が締まっていると何とも変化はこない。』(中村天風師「成功の実現」より)これがヨガの密法:クンバハカ。クンバハカとは『最も神聖なる体勢』という意味だそうです。(中村天風師はコロンビア大学で自律神経の研究により医学博士号取得・ベルリン大学で哲学博士号取得)「こうした体勢をとると、生命活動や免疫力をコントロールする自律神経が走る神経叢を効果的に刺激します。先ずお尻を締めると肛門神経叢が刺激される。肩の力を抜く事で横隔膜神経叢が、下腹に力を入れる事で太陽神軽叢や腹腔内神経叢が刺激される。この刺激が、ストレスで乱れた自律神経の交感神経と副交感神経のバランスを整えるわけです。」その結果、プラス思考になり、心には沈着冷静や泰然自若の世界が広がってくるといわれています。私は緊張しやすい性格で、緊張している時は息を止めている事が多かった様に思います。この体勢を意識して、足の裏からゆっくり長く息を吐く訓練をしたら、心配性が薄れて、あまり疲れなくなった様な気がします。